お知らせ
【寄稿】データサイエンスは魔法のツール
トヨタ自動車株式会社 Domatics 三村 健志朗
「他の産廃業者と同じことやっていても生き残れないから、うちを一番に使って!健志朗くんの価値は、業界に今までなかった発想を具現化できることなんだからさ!」
取締役の佐々木さんに初めて出会った時、かけられた言葉に、大変な勇気をもらったことを今でも忘れません。私は、トヨタ自動車の社内新規事業として、Domatics(土間選別のデータサイエンス)というサービスを推進している。元々は、プライベートで処理業というものに興味を持ち、個人的な趣味として勉強を重ねてきた。そこから、多くの事業者の現場に行きお話を伺う中で、処理業は様々なノウハウの集大成であり、素人がマネを出来るものではないということが理解できた。
一方で、
・勘/コツ/経験/属人/気合/根性の色が強く、後世に技術が残りにくい
・大きく生産性を改善するには、「無限の種類→有限の種類」「大量予測不可→定量予測可」
に変える必要があり、難易度が高い
・各事業者様が明確な課題感をもっているものの、関係者同士で話が擦りあいにくい
・段階的な改善の絵姿を描くのは難しそう(結果論、もしくは0か100かの議論になりやすい)
といった形で、優秀な方が多いにも関わらず、大きな変化が起きるのには時間がかかりそうで、もったいないという印象も持った。
これらを打開する方法として考えたのが”データサイエンスを活用した見える化/改善”なのだ。まず、技術の凄さや課題の大きさを数値化することで、各々の感覚ではなく、関係者全員で定量的な議論を行える環境を提供することが、解決の第一歩と考えた。処理業にデータサイエンスが浸透すれば、一気に見える景色が変わると当時確信し、Domatics(土間選別のデータサイエンス)を起案した。元々、私自身がデータサイエンティストとしてのキヤリアが長く、事業との相性も良いと考えた部分もあった。
しかし、データサイエンス(現場DX)とは、興味がある方も多い一方、なかなか処理業には馴染みのない内容である。事業立ち上げ当初も、当然のことながら、「まずは他社の成果を見てからにしたい」と様子見の企業様が多く、契約に繋がるケースは少なかった。そんな中、いち早く手を挙げられたのが、環境開発工業さんだった。同社との出会いは、北海道で行われた北海道産業資源循環協会のセミナーで、トピック紹介として10分ほどの事業紹介のプレゼンをしたところ、その会に参加されていた渡辺取締役に「うちの会社に来て、改めて今回の事業説明してよ」と声をかけていただき、即刻同社に訪問、改めてプレゼンをする機会をいただいたのだ。この時、かけて頂いた言葉が、冒頭の「他の産廃業者と同じことやっていても生き残れないから、うちを一番に使って!健志朗くんの価値は業界に今までなかった発想を具現化できることなんだからさ!」だった。
事業案を立ち上げてから受注がなかなか入らない間、私の軸も揺らぐ時が正直あった。業界の方に馴染みのあることや、似たサービスに寄せるべきか?と悩んだこともあった。でも、佐々木さんからいただいたこの言葉で、自分の存在意義を改めて再認識した。
ちなみに、結果的には、環境開発工業さんで、大きな成果を上げることができた。
が、もちろん、私だけの力ではない。この仕組みを受け入れてくれた現場の皆様も前向きだったおかげだと思う。データ取得/改善取り込みなど、通常の業務が忙しい中、並行して積極的に取り組んで頂いたおかげで大きな成果に繋がった。こう考えると結局は、人間力なのだとも感じる。どんな良いツールや環境があっても、使う人次第で大きく結果は変わってしまう。前向きに、新しいことに楽しくチャレンジができる会社には、魅力が高まって人も集まってくるし、技術力も高まるし、その結果、仕事もやってきて、従業員の方のやりがいに繋がる。これはどんな業界でも変わらないことですね。私も、データサイエンスという、処理業界に今までなかった新しい風を吹かせることが、異業種の人間である私だから出来る価値であり、そして元々私自身がやりたかったことなのだ。環境開発工業様とも引き続きご一緒させていただき、我々のサービスを磨き、業界に貢献をしていきたいと思う。
データサイエンスというのは、私にとって、元々、ただの得意技術だったのだが、今となっては、助けたい人に出会える魔法のツールとなっている。
【編集後記】
動脈産業のトップランナーであるトヨタ自動車の長年培ってきた技術とノウハウを静脈産業である私どもの業界へ新たな風を送り込んでいただいたことで、大きな成果をあげることが出来ました。加えて三村さんの熱量?熱風?が届き、私どもの意識も大きく変化したことは言うまでもありません。更にこの出会いは、私どもに「見ていなかった景色」に気づきを与えてくださいました。きっとこの出会いは、あらゆる縁と循環の大きな輪となって繋がっていくのでしょう。