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野球が教えてくれた人生
事業企画室 マネージャー 藤澤 剛(ゴウ)
私が生を受けてから今年で49年、2024年の正月休みに改めて自分の人生を振り返ってみた。そこには何かにつけて「野球」が出てくる。
野球をやっていた父親の勧めで小学校2年生から軟式野球を始めた。思いのほか楽しく、中学に進学してからも部活動で3年間白球を追いかけていた。そして、高校へ入学した私もまた野球漬けの日々を送った。本当は野球中心で過ごした時間を取り戻すべく、自由を満喫しようと心に決めていた。しかし入学前に経験者に一通のハガキが届き、軽い気持ちで野球部の練習に顔を出したのが最後、気が付けば野球部に入っていた。いや、ほぼ外堀を埋められ、入らざるを得なかったのだ。全くやる気にあふれた入部ではなかったのだが、この年、私の野球人生で最も大きな出来事が起きた。
中高通じて初めて、公式戦での先発ピッチャーが言い渡されたのである。しかも当日の朝に・・・(監督によると、私はノミの心臓なので事前に通達すると緊張でうまく投げられないと読んでいたらしい)。先発で投げに投げぬき、気が付けば9回1死まで無安打に抑えていた。このままいけばノーヒットノーラン。と思いきや、野球の神はそんなに甘くない。最後の最後で連打を浴び2点を返された。それでも結果としてチームは勝利、私も勝利投手にはなった。その時は何が何だかわからなかったものの、あとからじわじわと悔しさが込み上げてきた。ノーヒットノーランを逃したのだ。ひとり悔し涙を流したのだが、次の日この活躍が「札丘珠の秘密兵器 満点快投」という見出しで地元スポーツの紙面を飾った。前日朝、監督からのピッチャー指名にビックリしてガムシャラに投げ、ほっとしてから悔し泣きして、そして一眠りしたらまたビックリ。いろいろありすぎたこの時は、私の人生の中で一番脚光を浴びた瞬間でもある。
その後も、人生の節目や方向性を決定づけるうえでも何かしら野球が関わっている。大学は野球推薦で進学、就職先を決めるきっかけも野球の繋がりだった。社会人になってからも20年近く草野球を続け、およそ35年、人生の約70%の期間を野球と関わり続けてきた。我ながら、一体ここまで続けられたのは何だったのだろうか。
私が現役で野球をしてきた時代は、坊主、練習中の水はNG、絶対的君子の顧問や先輩、加えて理由なき暴言、暴力も当たり前の時代である。ましてやよほど秀でた才能や惜しみない努力をしない限り、野球で飯は食えない。きっとここまでやってこれたのは、理屈抜きに野球が楽しかったからであろう。練習と向き合ってきた日々に始まり、勝敗で感じる喜怒哀楽、そして何より野球を通じて出会えた仲間の存在等、同じことの繰り返しがほとんどだったかもしれないが、日々コツコツ積み上げてきた結果が先の新聞記事であり、決してビギナーズラックではない(はずだ)。
ふと思ったことがある。小さなことからコツコツと・・初めてこのフレーズを耳にしたのは、大御所芸人、漫才界のカリスマである西川きよし氏が参議院選挙で圧勝した際にインタビューで答えていた時だと記憶している(私はその頃、小学生だった気がする)。この言葉は派手さもなければ、下手をすると誰にも気づかれない地味な一言だ。しかし、今時の若者の表現を借りれば「チリツモ(塵も積もれば山となる)」。預貯金を始め、ダイエットや学習等、日々何かしらコツコツとやっていることは誰にでもあり、大切なことだという認識もあると思う。
社会人として世に出てから25年、営業一筋、うち10年ほど出向という立場で潤滑油販売、ガス販売。そして一昨年より4回目の出向先が、今まで経験したことのないリサイクル事業の当社、環境開発工業である。この年齢にもなると、未経験の異業種で一体何が出来るのか、新しい仲間として受け入れてもらえるのか、ただただ不安しかなかった。そこで何とか自分自身を奮い立たせるために考えたことが、「小さなことからコツコツと」やることだったのだ。
「Inc.com」のライターMarcel Schwantesさんによると、人の性格は主に4種類に分けられると言う。
1. 負けず嫌いな「リーダー型」
2. マネージメントが得意な「ピープル型」
3. 冒険家のような「フリースピリット型」
4 . 計画をコツコツ進める「タスク型」
参照:https://tabi-labo.com/281969/4-personality-types
生来の自分は、この4種類中だと2.マネージメントが得意な「ピープル型」だと思う。そして野球という人生の友を通じ、長年かけて「コツコツ計画を進める」タスク型の人生を教わった。改めて、人は一様ではない。ひとりの人間の中にもいろいろな可能性を秘めていると感じる。そしてこの野球に教わった「タスク型」の自分が今大いに役立っている。例えば今の新参者という立場で「ピープル型」人格をすぐには発揮できない。まず未経験のことを学びながら、社内の組織や関わる人々の空気間を吸収し、そして今までの人生で経験してきたことと照らし合わせながら、コツコツと真摯に謙虚に向き合い信頼を得る。去年は「タスク型」の人格で走ってきた、出向1年目であったと思う。
現在、私は新規顧客開拓の営業を行なっている。あらゆる産業や業種に関わっている当社の新規営業先を開拓するのは容易ではない。と思っていたが、実は積極的に働きかけていなかった業種があり、現在猛アタック中だ。当然訪問して即時成約になるわけはなく、今また思いっきり「小さなことからコツコツと」というフレーズが登場している。きっと、世の中は結構「小さなことからコツコツ」とで回っているのだろう。そして、これにしっかりと向き合っていかなければ、土台や基礎のないままどこかで崩れてしまうのだろう。生来の私である「ピープル型」か、まだ見ぬ「リーダー型」「フリースピリット型」を開花させるときもいずれ来るかもしれないが、今はこのタスク型人生を教えてくれた野球に思いを馳せながら、私はこの循環業にコツコツと向き合い楽しもうと思う。