環境開発工業株式会社 Create the Future

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コラム

ChatGPTと循環業のリアル

取締役 総務部長 渡邉 聡

2022年10月、私は取締役総務部長の任を受けてこの北広島にやってきた。富士興産の当社全株式取得によるものだが、環境開発工業にとって私は石油業から来た新参者。四半世紀以上の社会人生活ではあるものの、果たして私はこの循環業を理解し、自分の役割以上のものを果たせるのであろうか・・・。

獏とした不安を抱えたまま1か月が経過したある日、生成AIの一種、ChatGPTの記事を眼にした。新しい技術に賛否はつきものだが、正しく使えば劇的に業務効率があがる。そして人間の凝り固まった思考を柔軟にし、新たな視点を授けてくれる。そんな可能性を感じた。

そして、私は循環業に向き合うべく、ChatGPTの門を開け、以下の質問をしてみた。

 以下がChatGPTの回答。

「持続可能な産業廃棄物処理業: 企業価値向上のための道」
企業価値の向上は、どの産業においても永遠のテーマですが、産業廃棄物処理業においても例外ではありません。むしろ、持続可能な廃棄物処理がこれまで以上に重要視され、企業価値向上の鍵となっている現在、その取り組みに焦点を当ててみましょう。

このような序章で始まった回答は、表面的ではあるものの、一見わりと要点をおさえている気がした。そして書き出された回答がネット上の情報から導かれるものであり世間の最大公約数ならば、その実態はどうであるのか、実際に確かめなければとも思った。

この現場に身を置いて1年、なんとなく業界の感覚的なものも芽生えつつある。長らくこの業界で活躍されてきた御仁からは分かった口をきくなと叱責されそうであるが、新参者としての考察を述べられればと思う。

ChatGPT生成のコラムはまず「環境への貢献」から始まった。

◆環境への貢献
産業廃棄物処理業は、環境への負荷を最小限に抑える使命を担っています。企業価値向上の第一歩は、持続可能な廃棄物処理プラクティスを推進することです。(中略)環境への積極的な貢献は、企業の評判向上や法的リスクの低減につながり、長期的な価値を創出します。

◆技術の導入と効率化
技術の進歩は、産業廃棄物処理業においても大きな影響を与えています。最新の技術を導入し、プロセスを効率化することは、コスト削減とサービス品質向上につながります。(中略)これにより、競争力が高まり、企業価値が向上します。

ChatGPTの回答は長いので中略が入ることをご了承頂きたい。

「環境への貢献」…当社の事業そのものだ。そして「持続可能な廃棄物処理プラクティスを推進」とは一見さらっと流し読みしてしまうが、これは新しい発想でその技術を導入し確立していくことではないかと思う。焼却や埋立て等は長期的には持続不可能と考え、新しい出口をつくる。それが当社の成長ドライバーであり利益の源泉だ。それが「大地と生きる環境イノベーション」という当社の経営理念に繋がる。ChatGPTの回答「持続可能な廃棄物処理」という言葉だけではこの真意は伝わらない。実際の現場ではもう少し踏み込んだ環境への貢献を試みている。何となく、ChatGPTに勝った気分がする。

そして「技術の導入と効率化」は環境開発工業の十八番だ。「独自性とこだわり」のページを見て欲しい。これ以外にも、複数の素材で構成されたやっかいな廃棄物も、新たな処理方法を開発することでリサイクルを実現してきた。常に新しい発想で、リサイクル率の向上、効率化に取り組んでおり、現在も各機械メーカーと協働で新処理機を研究開発している。ChatGPTの回答は一見それっぽいが、至極当然、大した価値がないレベルの回答に留まっている。

さて、ChatGPTの回答の続き。

◆戦略的パートナーシップの構築
産業廃棄物処理業は、多くのステークホルダーと関わります。その中には顧客、政府機関、環境団体、サプライヤーなどが含まれます。(中略)共通の目標を追求し、持続可能な価値を創出するために連携することで、企業の信頼性と競争力を高めることができます。

◆教育と意識の向上
最後に、持続可能な産業廃棄物処理の普及には教育と意識の向上が不可欠です。社内外のステークホルダーに対して持続可能性に関する情報を提供し、正しい廃棄物処理の方法や重要性を伝えることが大切です。従業員や顧客の意識が高まることで、企業の持続可能性へのコミットメントが強化され、企業価値向上に寄与します。 (結び、略)

「戦略的パートナーシップの構築」は企業なら当然のこと。特に循環業においては同業者との連携強化は必須だ。自社単独では解決が難しい課題も、協力することで解決に至るものが多数ある。…がChatGPTの回答に同業者の例示はない。また様々な機械メーカーや技術研究機関などとの連携も推進している。新しい発想で課題解決に取り組むということは、顧客、政府機関、環境団体、サプライヤーという一般的なステイクホルダーのみならず、より広範なパートナーシップが必要。やはりChatGPTは循環業を分かっていない。この回答では正直物足りない。

「教育と意識の向上」についても思うところが多々ある。当社事業は根深く残るネガティブなイメージがある。ChatGPTのいう「情報を提供し、正しい廃棄物処理の方法や重要性を伝える」は確かに循環業にとって重要だ。しかしそれをただ声高に伝えるという感じではない。当社は国内外の自治体・地域社会や事業者様からの構内見学依頼を受けることが多々あるが(こちらのページを参考)、都度伝え方の工夫をしている。例えば、「廃棄物」ではなく「リサイクル原料」、「中間処理」ではなく「資源循環」など、ポジティブなイメージにしているのは「ネガティブなイメージがある」という現状を踏まえてのことだ。地味だがとにかく前に進む。一朝一夕にはいかない。「企業の持続可能性へのコミットメントが強化され、企業価値向上に寄与」というのは言うは易く行うは難しの典型だとしみじみ思う。

と、ひとりChatGPTにイチャモンをつけてみた。読み解いてみるとChatGPTはまだまだ甘い。そう思えるということは新参者の私もこの業界で成長しているということでもありちょっと嬉しい。

循環業は面白い。まだまだやることがある。未来に大きく開けた産業だ。そして、このようにChatGPTの回答に「まだまだだよね」と話せる仲間が一人でも増えれば良いなと思っている。

ご興味を持った方は是非、当社をご訪問いただければ幸いです。お待ちしております。